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叫んでも叫んでももう届かない

グリムジョー+一護→剣八
一護、破面パロ。


――――――

 


初めてそいつに出会った時、酷く興味をそそられた。

まず第一に、前頭部を覆う破面の象徴である仮面に目が行った。十刃を始めとした殆どの破面の仮面は、それこそ骨を模したように真っ白な仮面だと言うのに、そいつの仮面にだけは美しい赤い曲線が描かれていた。
そして、その派手なオレンジ色の髪と、琥珀のような茶色い瞳。
虚圏という空間は、色彩が貧相な場所だ。膨大な砂漠は真っ白で、空は暗かった。
そいつの存在を象徴とするような派手なオレンジは、いつか見た現世の太陽と言うものに酷似していて、グリムジョーの目には酷くギラギラとして見えた。
思わず目を細めてしまうような。
でも、当の本人は酷く冷静で、虚圏の空の色のように光を失った表情をしていた。
 
「新しい十刃だ。よく面倒を見てやるように」
 
藍染が何か言っていたが、グリムジョーの耳には届かなかった。
呆然とその新しい十刃を見詰めていたが、その心の内では早く手を出してみたかったのだ。
手を出すと言っても只単純に、拳を突き付けどれ程の強さを持っているのか、どれ程までが限界であるのか。
知りたいことは漠然と、単純だった。
 
「名前は一護。君たちとは少々変わっているが、よろしく頼むよ」
 
一護。
グリムジョーはそのたった二文字を、しっかりと脳に刻み込んだ。
 
 
 
「おい、新入り」
 
背後から声がして、一護はゆっくりと振り返った。
新入りと言う呼び方を自分のこととして認識してそうしたわけではないのだが、今この場所で新入りと言う立場であるのは自分しかいないはずだから、きっと自分を呼んだのだろうと思った。
送った視線の先には、目付きの悪い大柄の、ついでに態度もデカそうな男が立っていた。
そして、その男は髪も、瞳も、眼尻に伸びる痣さえも全てが真っ青だった。
青は、かつて一護が最も好きな色だったが、今は自分の戒めとなるばかりの色だ。
 
彼が自分を追って来るのは、決まって晴れた青空の日だった。
曇った日や雨の日は一切ない。雲一つない、青空に太陽だけの日に彼はいつもやって来る。
太陽が二つあるみたいだ、と面白そうに自分の髪を撫でる記憶も感触も、まだ鮮明に残っていた。
彼が楽しそうに姿を現す青空の青色が、一護は一番好きだった。
 
只、その感触の残る髪の上には今、憎らしくも仮面が覆い被さっていて。
 
「一護っつったか。なぁ、俺と喧嘩しねぇか」
 
その色を持って、彼と似た言葉を言うなんて。
一護はグリムジョーと視線を合わせることなく、すぐに顔を逸らした。
こんな姿になって虚圏へ訪れたが、藍染はすぐ傍へ自分を置かず、仮面を持っていることが当然のように破面たちと同じように扱った。
もしかしたら、時を見て尸魂界を襲い、この哀れな姿の自分に止めを刺させるつもりでいるのかもしれない。
それを分かって、尚ここにいるのは、
 
「お前、変な仮面付けてんのな」
 
あなたにたくさんの未練を残し過ぎていて。
 
仮面に触れようとするグリムジョーの手を、一護は思い切り叩き落とした。
 
「触るな」
「……っへぇ」
 
光なんて全く感じられなかったのに、ギラギラと睨み上げて来る瞳に、グリムジョーは笑った。
正直、珍しいのは色だけかと思っていた。底抜けに弱くて、もしうっかり殺してしまってもそれはそれでよかった。
だがこの瞳と言ったらどうだ。闘争心が剥き出しで、自分に対してこれでもかと憎悪を向けて来る。
昨日今日やって来たペーペーが、十刃に牙を剥こうと言うのだ。こんなに楽しいことはない。
ワクワクと疼く拳を容赦なく振り上げて、一護の背後にある壁を打ち抜いた。本当は一護を狙ったのだが、音もなく避けた一護の姿は既に自分の後。
一護は構えた右手をグリムジョーの脇腹目掛けて突き付けた。
だがそれを交わしたグリムジョーは、狙われた己の脇腹を不思議そうに見下ろした。
頭でも、喉でも、胸でもない。急所を外して狙った所にあるものは、
 
「……数字?」
「ろして、やる」
「あぁ?」
「てめぇなんか、ぶっ殺してやる!!」
 
その数字さえあれば、もしかしたらこの身が朽ちるまでに一回くらいまた会えるかもしれないと思ったから。
どんな結果になろうとも、もう二度と二人は一緒になれないことなんて分かり切っていることだけど。
 
でももう一度だけ、あなたに会いたいと思うから。
 
「てめぇを殺して、俺がセスタになってやる!」
「ははっ、上等だぜ新入り! やれるもんならやってみやがれ!!」
 
 
ぽっかりと空いてしまった触れることのない穴を掌で覆っても、当然だが何の感触はしない。
けれども、想いだけは悲しい程に染み付くように残っていて。
あなたの声が聞きたい。
あなたの姿が見たい。
あなたにもう一度触れたい。
只、それだけ。
 
「……剣八、」
 
呟く名前は青空に捨て損ねた未練。
ああ、もう一度、太陽の下で。
 
 
 
END
 
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