@39時代の8万ヒットリクエスト。
yuki☆さんからのリクエストです。
リクエスト内容→『にょ部屋で浦一。できれば甘めな話』
にょ部屋っていうことをすっかり忘れて、表用に書いていました……。
メールを確認してビックリしました。本当に確認ができないダメ人間です。トホホ。
表でも行けるっちゃ行けるし、にょ部屋でも行ける話。どっちつかずで申し訳ないです。
しかも甘いかどうかと問われると素直に頷けない!! オギャーン!!
こんなんで良ければ貰って下さい。苦情は受け付けます!!(泣)
yuki☆さん、リクエストありがとう御座いました! こんなんですがどうぞお持ち帰り下さい。
※お持ち帰りはリクエストして下さった方に限ります※
――――――
「ただいまー」
今日も学校が無事終わり、寄り道はせずに帰宅した。
特に用事があったと言うわけではないが、只何となくまっすぐ自宅までの道を歩いていた。
ポケットから鍵を取り出してドアを開け、下駄箱に手を掛けながら靴を脱いでいるとパタパタとスリッパの音がして、それは早足にこちらに近付いて来た。
「お帰りなさい!」
「おう、ただいま」
笑顔で迎えてくれたのは妹の双子の片割れ、遊子だった。
いつもだったら遊子が出迎えてくれる時、リビングから花梨の声も聞こえて来るが今日はそれがない辺りからして、きっと友だちとサッカーでもしに行っているのだろう。
その証拠に、玄関に花梨の運動靴とサッカーボールがない。
「夏梨はサッカー?」
「うん。今度の日曜日に隣町の小学生と決闘するんだって」
「……サッカーだよな?」
草試合なら分かるが、サッカーで決闘とは一体何をする気なんだ。
基本的に放任主義の家庭だが、大怪我だけはしないで帰って来てくれと一護は心の中で思った。
多少の怪我でさえ顔の濃い父親は大慌てするのだから、血でも流して帰って来た日には、怪我をさせた相手の命は保証できない。
放任主義と言う割に娘のことになると異常なまでに過保護になるのだから、面倒である。
一護が遊子の後を歩きながらリビングへ入ると、テーブルの上にお菓子が乗っていることに気付いた。
別に空腹だったわけでもないのだが、そのお菓子の量に驚いた。
クッキーやポテトチップスと言ったコンビニでも売っているような物から、五円チョコやふ菓子などの駄菓子類が小山を作ってたのだ。
花梨もいないのに、遊子の友だちでも来るのだろうか。
遊子の友だちでもこれだけ食べるような子はいなかったように思う。
「スゲェ量だな。誰か来るのか?」
「ううん、さっきお買い物に行って買って来たの」
「つっても買い過ぎだろ」
「いつも通り、五百円分だよ?」
「五百円?」
どう見たって明らかに、五百円以上の量だ。
お菓子の小山の横にはビニール袋が置かれているが、入れ過ぎなのか入れ方が乱暴だったのか、底の角が少し破けてしまっている。
「浦原商店でね」
「浦原ぁ?」
「ジン太君が入れてくれたの。私も多過ぎない? って聞いたんだけど、気のせいだって」
「気のせいじゃねーだろ」
「でも最近行くといつもこれくらい入れてくれるんだよ」
ニコニコと上機嫌で言う遊子は、心底ジン太を良い奴だと思っているに違いない。
ジン太の男心が分からないでもない一護は、今頃店前で掃き掃除でもしているであろうジン太に同情の念を感じた。
ごめんなジン太、俺の妹は鈍感らしい。
「あ、お姉ちゃんこれから外出る?」
「別に用事はねーけど、何で?」
「いつも良くして貰ってるから、これジン太君に持って行ってほしいの!」
「ほら、遊子から」
「え、ええぇえっ!! あ、あのチビから!?」
「『いつもありがとー、みんなで食べてね』 だと」
「ししっ、仕方ねーな!! 捨てるのも勿体ねーから貰っといてやるよ!!」
一護から紙袋を奪い取って、ジン太は転がる勢いで店の奥に突っ込んで行った。
何かにぶつかったのか、ガシャーン!! と騒々しい。
静まり返ってしまったことが逆に不安に感じるが、鉄斎が様子を見に行ったから大丈夫だろう。
やれやれと頭を掻きながら、一護は商店と奥を分ける板敷きに腰かけた。
その隣に座っていた浦原は扇子でハタハタと扇ぎながら、軽く帽子を直した。
「何を預かって来たんです?」
「大福。店に置いてないもんが良いだろーってさ」
「気の利く妹さんですねぇ。可愛いでしょう」
「……ジン太の本心にゃ気付いちゃねーけどな」
一護は家族を大事にする割に、それを褒められたりすると途端に照れて口数が減る。
現に今も頬を赤くさせて話を変えてしまって、浦原は扇子の下で可愛いなぁと呟いた。
「でもあの様子じゃ、アタシたちには分けてくれそうにないっすね」
「みんなで、なんて聞いちゃいねーだろうな」
「でも一護さん」
「んー?」
「大事な妹さんとは言え、男へのお使いなんてよく頼まれましたねぇ」
「何だそれ」
「てっきりヤキモチでも焼いてるんじゃないかと」
「親父じゃあるまいし」
「店長、お茶ですぞ。黒崎殿はお持たせになりますが」
後ろの襖が開いて、鉄斎がお盆を持って現れた。
湯呑の隣に置かれた大福を見て、一護がすぐに振り返ると今の端っこでジン太が突っ伏していた。
どうやら遊子からの伝言の『みんなで』 を忠実に守った鉄斎との死闘(ジン太にとっては) を繰り広げ敗北したらしい。
「俺の分はジン太にやっても良いのに」
「いやいや、大福は五個入っておりましたからな。一つは黒崎殿が召し上がるべきです」
只単に五個入りを買っただけのような気もするが。
甘やかすのは良くありませんからな、と言う鉄斎に首根っこを掴まれて宙ぶらりんになっているジン太の肩は震えているようにも見える。
悔しさからの身震いなのか泣いてるのかは顔が見えないから定かではないが、どちらにせよ可哀想である。
「鉄斎はあれで頑固で教育熱心ですから。一護さんが食べちゃって下さいよ」
「あ、ああ……それじゃあ」
一護が大福に口を付けたのを見届けると、鉄斎は頷いて静かに襖を閉めた。
「で、さっきの話ですけど」
「あ? ああ、別にヤキモチなんか焼かねーよ」
「そうなんですか? 一護さんもこれで一心さんの血を引いてますから、将来妹さんたちが結婚相手なんか連れて来た日には大暴れじゃないですか?」
「だから、それは親父の役目。俺はそれを止めるのが役目」
一護は粉の付いた指先をペロリと舐めて、お茶を啜った。
「夏梨と遊子が、その人が良いって言うならそれで良いじゃん。余程のろくでなしじゃなきゃな」
「ジン太はろくでなし枠には入ってないんですか?」
「あいつはあれで良いとこあるし。俺、昔は弟がほしかった時期もあったから、結構可愛がってんだぜ」
「そうですか」
「そう」
「じゃあ、もし遊子さんとジン太が将来結婚ってことにでもなったら、アタシと一護さん親戚になっちゃいますね」
思わずブブッとお茶を噴いてしまった。
あらあらと言いながら差し出してくれた布巾で口を拭いながら、何とも疑わしい目で浦原を見る。
「浦原さん、ジン太や雨と血繋がってたのか?」
「繋がっちゃいませんけど、あの子たちの保護者ですから」
「そ、そか」
浦原と親戚付き合い……と一護は天井を見上げた。
「……ちょっとなぁ」
「黒崎さん、今失礼なこと考えてたでしょう」
「いや、全然」
「ま、アタシとしては一護さんと親戚付き合いは避けたいですけど」
浦原の方からそんな言葉が聞けるとは思っていなかった。
やはりあの顔の濃い親父がいるからだろうかと、娘とは思えないことを考える。
すると、浦原は持っていた扇子を懐にしまい、両手で一護の頬を包んだ。
突然のことに一護は目を見開く。
「なっ」
「親戚なんて気まずい関係は御免です。アタシは、一護さんを直接お嫁さんにしたいです」
「は!? 何言ってんぅっ」
パクッと唇を塞がれて、言葉も呑み込まれてしまった。
暫くして唇が離れると、一護は先ほどの布巾で思い切り口を擦った。
「あら酷い。結構傷付きますよ」
「不意打ちは苦手だ」
「キスしても良いですかって聞いたっていつもさせてくれないじゃないですか」
「う」
痛いところ突かれて一護が固まる。
でも、そんなところも可愛いと浦原は言葉にはせずに笑った。
「お、俺そろそろ帰る」
「もうですか?」
「遊子に、帰りに牛乳買って来てって言われてんだ」
「本当、良いお姉さんですね」
「鉄斎さんに、お茶ごちそうさまって言っといて」
「姉妹揃って律儀だ」
浦原も立ち上がり、店先まで一護を送る。
別れ際、浦原は一護の手を取ってギュッと握った。
その行動に、一護はたたらを踏む。
「なんだよ」
「因みに」
「え?」
「さっきの、一護さんをお嫁さんにしたいのは本心ですから」
「アホかあんたはっ」
「かもしれませんが、あなたに関してだけですよ」
ニコッと帽子の影から笑われて、一護の頬は赤くなって行く。
握られた手を振り解いて、一護はプイっと顔を逸らした。
「……たらな」
「へ? 何です?」
「親父が良いって言ったらな!!」
呆気に取られて、ワッと走り出した一護を呼び止めることすら叶わなかった。
振り解かれた右手を見詰めて、キュッと握る。
帽子を取ると夕日が眩しくて、思わず目を細めた。
「一護さん、それじゃアタシ死んじゃいます」
あなたの父親は、あなたの見えないところで過保護なんですから!
END