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本心は本人でさえも分からない(一護虚圏王設定)

@39時代の8万ヒットリクエスト。

荊さんからのリクエストです。
リクエスト内容→『一護が虚圏の『王』(女王でも可)で、死神たちと対話する』

リクエスト募集を締め切ってから随分日が経ってしまいましたが、やっとアップです。
久し振りに長い話を書いたらダラダラしてしまいました。アレー。
女王でも良いとのことだったので、にょ部屋使用にさせて頂きました。個人的には、完全なパラレルってにょ部屋の方が書き易いです。好き勝手し放題です。←
今回は山本総隊長と同期だった一護が大昔に死神を裏切って……という話です。
リクエスト通りに……と言うか、好きになってくれるか不安です。本当好き勝手書いてしまったので。修兵をチョイスしたのは、本当に私の趣味です。一角でも良かったけど!

荊さん、リクエストありがとう御座いました! こんなんですがどうぞお持ち帰り下さい。
※お持ち帰りはリクエストして下さった方に限ります※

――――――

 


「すいません」

修兵が瀞霊廷を歩いていると、後ろから誰かに背中を叩かれた。
振り返ると視線の先には誰もおらず、少し視線を下ろすと眩しいほどのタンポポのようなオレンジがそこに咲いていた。
見慣れない顔に死覇装姿でないことからどうやら死神ではないらしい。
髪の短さから一見男かと思ったが、着てる着物の色や形から女であろうと判断した。
年の頃は修兵と同じ、もしくは少し下ぐらいだろうか。

「なんだ?」
「野暮用で瀞霊廷に来たんですけど、帰り道が分からなくなってしまって」
「ああ、やっぱり外部の人か」
「出入り口までの道を教えてほしいんですが」

修兵は丁度、門の警備をしている九番隊の隊員たちの所へ行くところだったのだ。
本来なら副隊長自ら足を運ぶような用事ではないのだが、いくつかの仕事が重なり、ついでだからと修兵がこうして歩いていたのだ。

「出入り口って言っても、俺が行くのは西門だけど?」
「はい、大丈夫です」

どうやら方向は一緒らしい。
それに、女は嫌いじゃない。
修兵は少女を足元から髪先まで見ると、ニコリと微笑んだ。

「案内するぜ」
「ありがとう御座います」


並んで歩き出し、修兵は人好きのする笑顔と声色で少女に話しかける。

「君、名前は? 俺は檜佐木修兵、ここの隊の一つで副隊長をやってる」

修兵は左の二の腕に付けた副官章を見せた。
少女は関心したように頷いた。

「俺、……私は黒崎一護、です」
「もしかして、普段口悪いタイプ?」
「あー……、すみません。つい」
「良いって。いつもの喋り方で喋ってくれて」
「黒崎一護っての、よろしく」
「いちご……見た目と口調の割に、可愛い名前してんのな」
「よく言われる! でも、結構気に入ってんだぜ?」

ニッという笑顔に、つられるように修兵も笑った。

「差し支えなければ、野暮用って?」
「知人に久し振りに会おうと思ったんだけど、そこまで来て勇気が出なくて」
「久し振り? 幼馴染か何かか?」
「幼馴染……そうだな、そうとも言うかも」
「でも勇気が出ないなんて、喧嘩別れした恋人にでも会うみたいだな」

からかうように笑うと、一護は違う違うと苦笑いで首を振る。

「そんなんじゃないって。只……今更会っても怒られるだけって言うか」
「あんまり良い別れ方はしてないんだな」
「喧嘩別れってのは半分当たり。もう半分は……本当なら、俺自身ここにいちゃいけないんだ」

どういう意味だろうと修兵が口を開こうとした時、一護がゆっくりと足を止めた。気付けばもう西門の前に辿り着いていた。
そびえ立つ大きな門を見上げてから再び一護を見ると、一護は背後の遠くに立つ隊舎の立ち並ぶ塔を見詰めたいた。
正面に大きく門を構えているのは一番隊の隊舎である。

「もしかして、一番隊の隊員? 何なら俺が間に立ってやろうか」
「……かつては共に学び、共に斬魄刀を持って戦った仲だけどな」
「え? 一護、お前」
「いずれ……近い内に会うことになるだろうさ、必ずな」
「いちっ」

スタスタと歩き出した一護を追い掛けるが、修兵は静かに一護の背中を見詰めた。
聞きたいことはたくさんある。もしかしたら、聞かなければならないことなのかも知れないが、なぜだかそれ以上言葉を続けることができなかった。

「案内してくれて、ありがとう。助けった」
「いや……なぁ」
「ん?」
「その、会いに来た奴と次に会う時、そこに俺はいるか? 俺ともまた会うことになるのか?」
「……どうだろうな。その時、そこにお前がいれば会えるかもな」

言葉の一つ一つが意味深過ぎて、思わず頬を冷や汗が伝う。
修兵はそれに気付かない振りをして西門に立つ兕丹坊を呼んだ。

「おーい、兕丹坊ぉ!!」
「檜佐木副隊長じゃねーですかぁ」
「客人が帰るってんで、門を開けてやってくれないか」
「分かりましたぁー! ちょっと待ってて下せぇ」

ゆっくりと開いていく門を見上げる一護を、横で修兵は疑いの目で見詰めた。
兕丹坊の呼び声に足を進める一護。
修兵は声を押し出すようにして一護を呼んだ。

「お前は、誰だ」
「……良い質問だけど、答えてはあげられない」
「なんだと!?」
「そうだな、友だちと正義を裏切った我儘、かな」

ズウゥゥンと音と地響きをさせて閉まる門の向こうに、一護の姿は見えなくなった。
修兵は思わずその場に浸り込んだ。
最後に見た一護の情のない笑顔に、感じたことのない寒気を覚えた。気付けば両方の足は小刻みに震えていて、修兵は強くその足首を掴んだ。

「何なんだよ……あいつは!」

バッと顔を上げると、転ぶように走り出した。
駆け寄って来た隊員たちをも振り切って、修兵は一番隊の隊舎へと急いだ。


バン! と激しい音を立てて扉を開けると、そこには山本総隊長と副隊長の雀部がいた。

「何ごとじゃ、騒々しい!」
「はぁ、はぁ……あ……失礼、致しました」
「そんなに息を切らせて、何をそんなに慌てることがある」

胸を押さえて荒い息を整えようとする。
心臓はいまだバクバクと音を鳴らし、こんなになるまで走ったのは久し振りだと思った。

「ご報告、ではありませんが……念のため総隊長のお耳に入れておきたいことが」
「なんじゃ」
「……先ほど、瀞霊廷内に見慣れない少女が歩いておりまして」

その言葉に、山本の肩眉がピクリと動く。

「帰り道が分からないと案内をしていたのですが、道中の会話にいくつか引っ掛かる点が」
「……詳しく聞こう。そ奴は何の目的で瀞霊廷に入った」
「喧嘩別れした友人に会いに来たと。しかし、会う勇気も資格もないと会わず仕舞いだったようです」
「その友人とは?」
「共に学び、共に斬魄刀を持って戦った仲だと言っておりました」
「死神か」
「はっきりとは言っていませんでしたが、恐らく」
「……そうか」
「総隊長?」
「名は……名は聞かなかったか」
「オレンジ色の髪をした、黒崎一護と申しておりました」

山本はガタン! と椅子を倒さんばかりに立ち上がった。
見たこともないような山本の動揺した様子に、修兵と雀部は顔を見合わせる。

「他には、他には何か言っておらなかったか」
「は、はい。その友人には会えなかったが……いずれ必ず、会うことになるだろうと」
「……そうか」

落ちるように再び椅子に座り、山本は片手で目を覆った。
嘆くような大きな溜息が聞こえ、雀部は総隊長の横へと駆け寄った。

「総隊長」
「……檜佐木よ、もう下がってよい」
「は……総隊長、この黒崎という人物は一体……」
「よい、下がれ」

それ以上聞くことができずに、今度は静かに部屋の扉を閉めた。


「かすかに霊圧を感じたが、まさか、あ奴が……」
「総隊長?」
「……そうじゃな、あ奴のことを知ってる者など、瀞霊廷広しと言えどももう儂しかおらんじゃろう」



ヒュッと冷たい風が吹き、死覇装の裾をバタバタと揺らした。
破面たちと、白い着物に身を包んだかつての同士、藍染、市丸、東仙を目の前にして隊長格たちの眼光は鋭くなる。
藍染が一歩前へと出て、見せ付けるようにして笑った。

「君たちに会わせておきたいお方がいる」
「俺たちに、会わせたい?」

冬獅朗の眉間に皺が寄る。

「君たちは一つ、勘違いしていることがある。我々や虚圏、そして破面たちを統括しているのは私だと思っているかも知れないが……それは違うのだよ」
「まるでお前の上にまだ誰かいるような口振りだな」
「その通りさ。私たちは、あのお方の手駒にすぎない……あのお方のために動くことこそが、私たちの喜びでもあるがね」
「なに……」
「山本元柳斎重国、君にとっては……感動の再会になるんじゃないかい?」

東仙が手をかざすと、空中に亀裂が入り口が開いていく。
黒腔から現れたのは、藍染たちと同じ白い着物を靡かせた幼い少女だった。
現れた姿に、修兵は目を見開いた。

「お前はっ!!」
「口を慎め。だが、檜佐木君がこのお方を知っていたとは、意外だったな」
「どう言うことだ檜佐木!」

動揺を隠し切れない修兵に砕蜂が叫ぶが、修兵はまだ幽霊でも見るような目で少女を見詰めていた。
ハッとして山本を見ると、山本も目を見開いて立ち尽くしていた。

「黒崎、一護」

震えた声で呼ばれた名に、一護は苦笑いを浮かべた。


「本来こんな所に足を運ばせるわけにはいかないが、今日は特別に一護様が」
「藍染、喋り過ぎだ」

ブワッと強風のようにぶつかる強大な霊圧に、藍染の片膝がガクンと折れた。
その様子に驚きながらも、離れた所からでも分かる霊圧の大きさに死神たちは身震いさせた。
あの人物は一体何者なのか。
修兵や、そして山本とどういう関係なのか。
視線は自然とそれぞれに注がれていった。

「も、申し訳ありません」
「……山本、久し振りだ」
「そうじゃのぅ」
「何年振りくらいかな。一世紀は立ってるか」
「隊長を殺し姿を眩ませ、生死も分からぬままどうしておったかと思えばこんなことをしておったとは」
「一世紀も会わない間に、お前は随分老けたな」
「お主は何も変わっておらんの。その髪や目の色も、声も姿かたちも……最後に会った日のままじゃ」

幼馴染みのような会話に、死神たちは山本と一護を交互に見る。

「総隊長! あいつは一体……」

浮竹の言葉に、山本と一護は気の合う仲間のように同時にフッと笑った。

「同期だよ、山本の。俺は、藍染たちと同じように昔は死神だった」
「死神!?」
「本当に、大昔の話だけどな」
「十一番隊の初代隊長じゃった。更木と同じで、喧嘩っ早い奴じゃった」
「若気の至りだ」

一護は小さく息を吐いて、昔を思い返すように目を閉じた。
そして腰に携えていた真っ黒な斬魄刀の柄を握ると、ゆっくりと刀身を引き抜いた。
刀身までも漆黒の刀に不気味な美しさを感じながら、死神たちは息を飲む。

「その斬魄刀も、懐かしい姿じゃ」
「ああ、斬月もお前に会えて嬉しいって言ってるよ」
「……今更聞くのも無駄じゃろうが、戻る気はないな」
「……ごめん」
「そうか」
「なぁ山本。俺たち今までたくさんのことで競って来けど、勝敗率覚えてるか?」
「どうじゃったかの。競い合い過ぎて、もう覚えておらん」
「俺もだ。だから、だから。これで終わりにしないか」

任務でもなく、稽古でもない。
この命と、魂を賭けて。

「終わろう」
「そうじゃな」

山本も流刃若火の刀身を引き抜き刃先を一護へと向けた。
もう、本当に戻れないのだと一護は内心クスリと笑う。
戻るつもりはないけれど、せめてあと一度くらいはかつての仲間と共に酒を飲みたかった。瀞霊廷へ訪れたのも、どちらにせよ最後になるだろうと思った上の未練がましい行動だったのだ。

「檜佐木修兵っ!」
「は、」
「騙したみたいで、悪かった! 結局こんな形になったまったけど、また会えて良かったよ」
「一護、」
「見た目の割にオバアチャンで、ごめんな」

名乗った時のようにニッと笑うと、修兵は思わず一護、と叫びたい衝動に駆られた。
しかし一護のその視線は山本に向き、斬月と呼ばれた斬魄刀を握りしめた。
柄の先に垂れた黒い鎖が揺れてジャラリと音を立てる。

さぁ始めよう。
勝っても負けても、これで最後だ。



END

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