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自分のため、あなたのため、愛のため(角一)


猪米さんからのリクエストです。
リクエスト内容→『角一♀で同期』

大変長らくお待たせ致しました……超スイマセン。
最初に書き出してから随分経っていたんですが、「こんなんじゃ嫁に出せない!!」 と結局五回くらい書き直してしまいました。不束者ですが、貰って下さい…。
因みに、管理人は角一大好物で御座います。とても丁寧で謙虚なメールを頂いて「あれ? サイトに角一アップしてなかったっけ~?」 と思ったら昔の記憶でした。下げちゃってたのね、私……。

猪米さん、リクエストありがとう御座いました! こんなんですがどうぞお持ち帰り下さい。
※お持ち帰りはリクエストして下さった方に限ります※


――――――

 

絵具を零したように一面に広がる空は真っ青で、満開の桜は初々しい新人たちを歓迎するかのようにヒラヒラと美しく舞い散って行く。
春眠暁を覚えず、とは何の一句だったか覚えていないが、まさにその一言に尽きるとばかりに大きな欠伸を一つ。同じ黒の着物を着た大勢の新入隊員が綺麗に列を揃え、その最前ではこの瀞霊廷のトップである山本が有難迷惑な説教を並べているが、元来大人しくしているのは性に合わない質だ。全く頭に残らない。
そんな自分とは正反対に、すぐ近くに立っている弓親は顔色一つ変えずまっすぐに山本の話を聞いていた。本当は聞いていないのかもしれないが、そういう『振り』もそつなくこなす男である。世渡り上手で器用な彼をチラリと横目で見て、一角はつまらなそうに溜息を吐いた。
 
一角は流魂街からこの瀞霊廷にやって来た。派手な戦いを好む彼は流魂街では飽き足らずに、もっと強い相手と戦いたい一心で護廷十三隊に入隊した。一番の理由は、流魂街で負かされた更木剣八を追って来たのだが、彼以外にも強い奴らがゴロゴロしていると聞くし、流魂街でも度々事件の原因となっていた虚と戦う術を身に付けられると言うのだから、入隊しようと決意するのに時間は掛からなかった。
そんな一角の配属先は文句なしの十一番隊。追って来た剣八が隊長として君臨し、十三ある隊で最も戦いを好む戦闘部隊だ。尊敬する男の下で刀を振って戦えることに、一角はとにかくウズウズしていた。
 
入隊式を終え、新入隊員たちが各隊舎に散って行く。ここまで来るのに時間が掛かってしまった。やっと自分を負かした最強の男に会える。
そう意気込みだだっ広い道場に踏み入れると、大勢の厳つい男連中の中に一際目立つ姿を発見した。周囲に比べ小さな背丈に華奢な肩。その身体に似合わない鉈のような大きな斬魄刀を背負った、オレンジ色の頭の、女。
隊長である剣八の姿はまだなく、小競り合いが始まる場内で女は大柄の男たちに絡まれていた。
 
「女ぁ、隊舎間違えてんじゃねーか? ここは瀞霊廷一の戦闘部隊だぜ、女の来るところじゃねえ」
「雑用係か? もしくは、俺たちの奉仕役か?」
「変な斬魄刀持ちやがって。女なら服なんか脱いで転がってやがれ!!」
 
始終無言でいる女の細い腕を男はその武骨な手で握った。その様子に一角が男たちを止めようと一歩踏み出した時、ズダンッと大きな音と揺れが道場に響いた。一角は目を見開き、道場内全ての視線が女に集まった。
 
「調子乗ってんじゃねーぞ、このクズが」
 
それが無言だった女の第一声だった。流石十一番隊に来ただけある、というべきか。女と言えども口が悪い。
女の足元には何が起こったのか理解できず目を白黒させた男が転がっている。
 
「テメェが転がってろ」
 
その一言に男は顔を真っ赤にさせ起き上ると、鼻息荒く女に襲いかかった。
 
「舐めた真似しやがって!! もう許さねぇ!!」
「んな汚ぇツラ、誰が舐めるか!! オラァッッ!!」
 
白打と言うには程遠い、鳩尾を狙った見事な右ストレート。あまりの衝撃に白目を向いて、男は静かに倒れた。
唖然とした場内だったが、集まったのは喧嘩上等の面々ばかり。女の拳に感化した周囲は、一斉にあちこちで喧嘩を始め、そして女に襲いかかった。
 
 
「で、これ全部お前がやったのか」
 
十一番隊を締める剣八が道場にやって来た時、新入隊員たちは場内の床に突っ伏し、その殺伐とした状況の中でたった一人の女が無傷で立っていた。剣八の言葉に女は首を振った。
 
「こいつも一緒」
 
女がピッと指差した先には、剣八を目の前に背筋を伸ばした一角がいた。剣八は一角の姿に流魂街でのことを思い出し一人納得した。
 
「こいつだけ、俺のこと殴ろうとしなかった」
「女と喧嘩する趣味はねえよ、つか隊長相手にため口きくな」
「俺のこと、助けようとしてくれてたんだろ? 立ち回り方がそうだった」
「けっ、いらなかったみてーだけどな」
 
一角の不貞腐れたような言い方に、女はキョトンと数回瞬きをすると、可笑しそうにクスリと笑った。
 
「んなことない。ありがと」
 
女のその一言に、少しだけ表情を変えた一角を道場の出入り口にずっと寄り掛かっていた弓親はおや、と口の端を上げた。
 
「黒崎一護っての。よろしく」
「……斑目一角だ」
 
差し出された手を握り返すと、それは小さくて白くて柔らかい女の手。それが一角と一護の出会いだった。
 
 
一角と一護はとにかく強く、十一番隊の中でも一際目立った存在だった。周囲より実力が桁違いに備わった二人は、稽古試合や実戦でどんどん席官たちを捻じ伏せ、まさに出世街道まっしぐら。いつの間にか一角は三席に、一護は四席になっていた。この日も二人は道場で打ち稽古をしていた。
 
「このっ!!」
「まだまだぁ!!」
 
一角が一護の木刀を下から思い切り弾き飛ばす。ガラガラガラと派手な音を立てながら落ちた竹刀を横目に一護が手首を抑えると、一角はその隙に一護の足を払った。
 
「わぁっ!」
 
ドンッと一護は尻もちを着くようにして仰向けに倒れたが、打たれていない方の手を軸にして身体を支えた。しかし、腹の上に圧し掛かるようにして押さえ込まれ、一護の軽い身体は易々と動かなくなってしまった。
 
「お、重っ! くっそ」
「だっはっは!! 今日も俺の勝ちだな」
 
足をばたばたさせても、上手く力の入らない足では一角の背をパタパタと叩く程度で何の威力もない。一護を見下ろす体勢と痒い程の抵抗に一角は思わず鼻を押さえた。悔しそうに眉をキュッと寄せて自分を見上げて来る一護の視線にチカチカした。
 
「もう! 俺の負けで良いから退けってば、苦しい!!」
「あ、ああ、悪い」
 
勝ったはずの一角がヨロヨロと一護の上から退く。一護は腹を撫でながら大きく深呼吸した。
 
「また負けた」
「俺は強いからな。テメェなんかにやられるかよ」
「……一角は自分が強いから俺に負けないって、いつも言うな」
 
仰向けのまま天井を見詰めてそう言う一護を、一角は見詰めた。
 
「俺が女だからって言わない」
「お前が女かどうかなんて、関係ないだろ。実際、そこら辺の男より強いじゃねーか」
「……でも周りは俺を女だからって馬鹿にするから。だから、一角がそう言ってくれるの嬉しいんだ」
 
ニッと笑う一護の視線に、一角の頭は今度こそ沸騰した。
 
 
そんな話をした数日後、虚が現れた流魂街の森に十一番隊の数名が出動していた。太陽の光も届かない、薄暗い森の中。虚の雄叫びとビシビシ来る霊圧は間近に迫って来ている証拠。一角と一護は斬魄刀を構えながら背中合わせに体勢を整える。
 
「近ぇぞ」
「分かってる」
 
ギュッと斬魄刀を握り直す。すると木の枝が大きく揺れ、醜い白の仮面を被った巨体が二人の前に飛び降りて来た。グルルル……と涎を垂らすその顔からは表情が読み取れない。
その姿を捉えると、一護は地面を思い切り蹴って虚に斬りかかった。だがその巨体に似合わず、身軽に一護の一撃を避けた虚は、一護の上空に回ると大きな手を振り下ろした。その衝撃を斬魄刀を盾にして受け止めようとするが、支えの足りない身体は思い切り吹っ飛び、太い木の幹に叩き付けられた。
 
「ゲッホ!! ゲホゲホッ」
「一護!!」
 
グワンと揺れる頭に目の焦点が合わない。猛スピードで接近して来る虚の霊圧だけを只感じていた。
そしてすぐ目の前までやって来たで虚の影。再び振りかざされた大きな手に、一護は身体が追い付かず目をギュッと瞑った。
 
「ぐっ」
 
だがさっきのような衝撃はなかった。突然何かに包まれたような感触に短い悲鳴。咄嗟に瞑った目を開けると、一護は予想しなかった光景に瞳を揺らした。
そこには自分を抱き締める一角の姿があって、苦しそうな表情には血が飛び散っていた。
 
「いっか……一角、一角!!」
「いってぇな……この、虚如きがっ!」
 
一角は片腕で一護を抱き寄せたまま虚へ身体を向けると、もう一方の手で持っていた斬魄刀を思い切り振った。一角に一撃を食らわせ油断した虚は、反応も遅く真っ二つに仮面を割った。
 
 
「一角っ!!」
 
地面に降りた一護は一角の腕から出るとギョッと目を見開いた。一角の背には自分を庇って付けられた虚の大きな爪痕。出血は止まらず、黒い死覇装は赤黒く染まったいた。
 
「やだ、一角っ、やだっ」
「だい、じょーぶだ、こんくれぇー……」
「でもっでもっ」
 
慌てて両手で背中を押さえてみるが、傷は大きくとても止められそうにない。途端に真っ赤に染まった自分の手に、一護は益々慌てた。
 
「何で庇ったんだよ!! 一角がやられることなかった、俺がっ」
「…っかヤロー」
 
ゼェゼェと荒い呼吸の中で、一角が笑った。
 
「お前は、女だろうが。男の俺が守れなくてどうする……女の身体に、こんな傷似合わねーだろ……」
 
言い終えた頃、二人の下に十一番隊の部下たちと四番隊の隊員が駆け付けた。四番隊の施す応急手当を呆然と見詰めながら、一護は一角の血がべっとりと付いた両手をギュッと握った。
 
 
 
「何ぃ!? 移動した!!?」
 
一角が四番隊の病棟から退院して、久し振りに出勤した十一番隊でまさに寝耳に水の言葉だった。
 
「僕も止めたさ。勿論隊長も、副隊長もね」
 
いつもの口調、とはいかず、弓親は溜息交じりに目元を伏せた。一角は弓親の言葉を信じられないでいた。一護がこの十一番隊を出て、他隊へ移動したと言う。
予想以上に長くなってしまった入院生活で、一護はたったの一度も見舞いに来なかった。自分のせいで負わせてしまった傷を申し訳なく思い、見舞いに来づらくなっているだけだろうと思い、一護会いたさに暇な入院生活に耐えたと言うのに。何も伝えず、残さずに去ってしまったと言うのか。
 
「何だよそれ……どこの隊に行ったのか聞いてねーのか!?」
「さぁ、僕は聞いてないけど」
「くそっ」
 
隊舎に戻って来て早々、一角は舌打ちを打って隊舎を飛び出した。宛てなんてなかったが、勝手に出て行った一護をはいそうですかと見過ごすなんてできるわけなかった。手当たり次第に色んな隊舎を訪れてみたが、一護の姿は結局見つけることはできなかった。
 
 
一護がいなくなって数年経った。一角は相変わらずの三席で、弓親は五席。一護が埋めていた四席だけがポッカリ穴を開けていた。
あれから仕事をこなしながら一護を探し続けていたが、やはり姿はない。あんな派手な頭が見付からないのだ、死神をやめてしまったんじゃないかという考えすら過った。
 
ある日、一角は虚退治に向かった際に大量の虚相手に怪我をした。大した怪我ではなかったが、鬼道を用いた治癒術を持たない一角は四番隊を訪れた。
 
「斑目三席じゃないですか、四番隊にいらっしゃるなんて珍しい」
「ああ、ちょっと任務でな。頼む」
「準備しますので、そこの治療室でお待ち下さい」
 
四番隊の隊員に言われ、一角は通された椅子に腰かけた。暫くして、カラカラと治療道具を運ぶワゴンのキャスター音が聞こえて来た。
 
「失礼しまーす」
 
さっきの隊員の声とは違った。一角は顔を上げると、その姿に目を見開いた。
 
「い、ちご」
「一角っ」
 
お互い信じられないものでも見るようにそれ以上の言葉も出なかった。
一護は一歩後退り、部屋を出ようと一角に背を向けたが、一護が出て行ってしまうより早くその腕を一角が捕まえた。久し振りに触れた、一護の肌だ。
 
「一護」
「……」
「言いたいことは山ほどある。何で勝手にいなくなったとか、今まで何してたとか……けど、一番は」
 
「会いたかった」
 
一護はクルッと向き直り、一角の胸に飛び込んだ。すかさずにもう逃がさないとばかりに一護の身体を思い切り抱き締める。
 
「……ごめんっ」
「バカヤロー、こんな長い時間何してやがった」
 
ぐすっと鼻を啜る一護の頭に顎を乗せる。変わらない感触と変わらない髪の匂い。
 
 
「一角に、初めて女だって言われて嬉しくて……でもショックで」
「当たり前のことだろ」
「女扱いされたのがショックだったんじゃない、一角を守れない自分がショックで、いっぱい血流してるのに何もできない自分が……惨めで、」
 
自分を守ってくれた一角は、致命傷ではなく出血の多さで生死を彷徨ったと、後に四番隊の隊員から聞かされた。苦しむ一角を目の前に、虚を倒すどころかお荷物になり助けることもできない自分が何より悔しく惨めだった。
 
「戦いで一角を守れないんだったら、他のことで守れるようになろうって思った」
「……だから」
「だから、四番隊への移動を志願したんだ。今度は、俺が一角を助けて上げられるように」
 
一角の片腕にできた傷口に一護が手をかざすと、一護の霊圧がその傷を癒した。鬼道が苦手で、剣術ばかり強かったはずなのに。この会わなかった数年で叩き込んだのだろう。
 
「無茶、しやがって」
「本当にごめん……でも、俺もっ……俺も、会いたかっ」
 
言い終える前に、一護の言葉は一角の口で塞いでしまった。もう何も言わなくたって十分だった。
こうして再会し、これまでの一護の時間全てが自分のためだったと知った今、離れた時間を埋めるために一護を感じていたかった。
 
 
 
END
 

 

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