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さよなら、小さな恋心

修→一とイズル。
一護はちょっとも出て来ません。イズルは色んな女性の間でウロウロしていそう。

――――――

 


九番隊の檜佐木副隊長は仕事熱心で有名だ。
文武両道で霊術院生の頃から成績優秀で、それはそれはおモテになったらしい。
今だってそれは変わらない。

「こんなこと、突然失礼かと思ったんですけど……ずっとお慕いしていました。付き合って下さいっ」

そら見ろ、今だってこうして熱烈な告白をされている。
だが、そんな修兵もここ最近で一つ、変わったところがるのだ。

「あー……、悪いけど君とは付き合えない」

女性からの求愛を断るようになったことだ。
ちょっと前までなら自分好みの女性から告白されようものなら、例えその時他に付き合っている女性がいようとも片っ端からその求愛を受け入れて来た。
修兵のすごいところは、そんな無鉄砲なことをしていてもトラブルを起こさなかったことだ。
昔酔いの席で「女を口説き落とし、尚且つ綺麗に別れるにはテクニックがいる」とか何とか、有り難くもない作法を伝授されたが今までに役立ったことは一度もない。


見たところ、顔もスタイルも修兵好みな女性隊員はショックを受けて目にウルウルと涙を揺らしていた。

「ど……、どうしてですか? 私にどこか足りない点があるんでしょうか」

結構な自信を持って今日に挑んでいたらしい。
プライドを傷付けられた一見控え目そうな高飛車女は負けじと何度も食らい付いた。

「好きな子がいるんだ。その子とどうにかなれるまで、誰とも付き合わない……そう、心に決めてる」

今何と言ったんだ。あの男の風上にも置けなかったような性欲大魔王がなんて純情なことを言っているんだ。
彼女も以前の修兵の悪行を知っていたようで、目を見開いたまま数秒硬直していた。
彼女に限らず、修兵を古くから知っている者なら誰しもが同じ反応をするだろう。

完全にプライドが傷付けられた。女好きで一部で有名だった檜佐木修兵にフラれた。
互いに何も喋らず、数秒の間を過ごすと、女性は口元に手を当てて涙を零しながら走り去って行った。


「泣かせちゃって」
「おわあぁぁっ!! ……って吉良、テメェ驚かすな!!」
「結構可愛い子だったのに」

チラリ、と目だけで表情を盗み見ると、バツの悪そうな顔で頭を掻いた。

「そうだな、可愛かった」
「いいんですか? 檜佐木さんのことだから、後で絶対後悔しますよ」
「煩ぇ。俺は決めたんだよ、男に二言はねぇ」
「そうですか……檜佐木さん、その好きな子って」

そこまで言い掛けて、イズルは反射的に言葉を止めてしまった。
言い難い、何だかとっても言い難い。
その名前を出すことは自分にとって何のマイナスにもならないはずなのに。
言ってしまったら何かが無くなってしまうような気がした。

「……いや、何でもないです」
「……おう」
「って言うか、本当に好きな子なんてできたでんすか? 断る口実だったりて」
「馬鹿! 俺がそんなつまんねー嘘言うか。それよりお前は……」

修兵の怒鳴り声がゆっくりと静かになって行く。その目は、イズルから視線を外し遠くのものを追っていた。
綺麗なオレンジ色はすぐに通り過ぎて見えなくなったしまったけれど。

心の中で冷静に「やっぱり」なんて思って、そしてまた修兵を見る。

口をポカンと開けて、まるで学生のするような恋だ。
青臭くて、酸っぱくて、味を見るにはまだまだ実の小さい恋だ。
あの悪名高かった先輩が小さな恋を実らせようと試行錯誤し足掻いている。

「檜佐木さん」
「あ?」
「……何か、変わりましたね」
「お前は変わんねーな」

その言葉はイズルの心臓にグサリと音を立てながら、まっすぐに突き刺さった。
自分を誤魔化していることならよく分かっている。それを修兵に見透かされて、まるで挑発されているような態度に何だか腹が立った。

「僕は……」
「何の間で揺れてるのかは……知らないことにしてやっても良いけどな」
「僕は別に!」
「モテねぇのに二股かけるなんざ、益々モテねーぞ」
「っ!」

ああ、何て恥ずかしいこと。
イズルは赤くなっているだろう自分の顔に手を当てて、下を向いた。
初恋を想い続けて来たはずなのに、傷口を優しくされて揺らいでしまった。ときめいてしまった。

「……安心しろ、男の生理現象だ」

元々、我が道を貫いていた男が心を入れ替えて新たな道を貫こうとしている姿が何と勇ましいことだろう。
その姿を憧れる自分は、やはりこの男の後輩なのだろう。
男の生理現象、そう自分に言い聞かせてこの不埒な心とは決別しよう。


「俺はさ……決めてんだ」
「はい」
「……一護と絶対にヤるってな!」

さよなら、さよなら。



END

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