『惚れた女の肌を見れば男は落ちる』 の続編。
性描写はないですが、若干背後にご注意を。
――――――
障子に手を掛ける。
剣八の気配があるから、中にいるのは確実で。
きっと中からも月明かりの影が映って、自分の存在は分かっているだろう。
「……一護か」
部屋の中から呼ばれ、一護の身体はピクリと小さく強張った。
怒っていたら。
もう、愛想を尽かされてしまったかも知れない。
「……うん」
「入って来い」
少し間を空けて、ゆっくりと障子を開ける。
布団の上で仰向けに寝ていた剣八は、一護の姿を見て置き上がった。
ここへ戻る道のりで、ごめんとか、言い訳とか、第一声に何て言おうと考えていたが、顔を見たら考えていたこと全てがどこかへ行ってしまった。
愛しい。
また、心臓がドキドキと高鳴って。
「、剣八っ」
大きな身体に飛ぶように抱き付いて、首に腕を回す。
ギュッと腕に力を入れると、剣八は一護の腰に腕を回した。
感じる体温に、一護の目には涙が溢れる。
「戻って来たら、もう逃がしてやれねぇぞ」
「嫌でも逃がされてやらない」
シュルッと布の擦れる音がしたと思ったら途端に楽になる腰回り。
肌蹴る胸元に唇を合わせられ、一護の唇から熱っぽい息が漏れた。
チュッ、チュッ、と場所を変えながら口付けされて、剣八の唇が胸の傷に触れた時、一護の身体がビクンと揺れた。
恐る恐る剣八の表情を見ると、満足そうに舐められた。
「俺が刺したところだ」
「……そうだよ」
「俺のだ」
そう言う剣八に、一護の心臓の高鳴りがドキドキからキュゥーンに変わった。
こんな物騒な傷跡が所有の証しだなんて、何て嬉しいことを言ってくれる。
それでも、身体に残る傷は剣八からのものだけではないから、また怖くなる。
「ねぇ」
「あん?」
「……俺、傷ばっかだし。全然綺麗じゃないから………嫌だったら、やめても良いから」
「テメェ、ナメてんのか」
「は? わっ」
肩を掴まれて思い切り押し倒された。
枕の上に落ちたので痛くはなかったが、驚きで目を見開く。
「俺以外の雑魚が付けた傷が残ってるってのは、正直腹が煮え繰り返るくらいムカつくがな。だからって傷があるのが何だ」
「でも、だって」
「そんなもんで俺が萎えるとでも思ってんのか」
「嫌になんない?」
肌蹴た死覇装を開かれて、サラシも巻いていない胸が露わにある。
腹の傷をべろりと舐め上げられて、一護の口から甘い熱が零れる。
思い掛けない行動に、一護は慌てて剣八の頬を包んだ。
「ムカつくが、この傷もお前を作ってる一部なら、仕方ねぇ」
「え……」
「全部まとめて、お前ってことだ」
零れ落ちる涙は、恐怖からでも悲しみからでもない。
疑った後悔と、たくさんの幸せからだから。今こそ大いに涙を流す時だろう。
「俺の全部、剣八に預けるから」
「当然だろ」
瞼を閉じて口付けを交わせば、触れるだけのものからどんどん深くなっていく。
腹の傷も背中の傷も、もう痛くはなった。
END
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